2007-03-28

M-net 2007-03-28

自然に暮らす

 先日所用があり、大自然の中で暮らすKさん宅を訪ねた。
 中国内陸の湖北省の省都武漢市より飛行機で1時間。それからデコボコの悪路を走る事、実に4時間で目的地近くに着いた。山を越え谷を越え、道路と言うより石の道と言った方が正しい。途中大きなつり橋を渡る。橋の長さは300m位だろうか、高さは谷底を見ると目まいがする程で足がすくむ。鉄のワイヤーロープと木の板を並べた簡単なつり橋である…。やっとの事で目的地に着いたと思ったら、車から荷物を降ろし、これから急坂の獣道のような道を登っていくと言う。目的の家までは車で行く事が出来ない。道がないのである…。

 日は暮れて辺りは薄暗くなってきた。ふぅふぅ言いながら登り始めたら、山の上からKさんの家族(父親)が迎えに来てくれ、荷物をかごに入れて持ってくれた。ありがたい。急な坂を300m(実際は100mかも知れない)位登り切るとそこに目的の家があった。山の上の一軒家である。家族全員(お父さん、お母さん、娘さん2人)で温かく迎えてくれ、疲れも吹っ飛んだ。家族は人間だけでなく犬5~6匹、猫まで歓迎してくれ、ワンワン、ニャンニャンの大騒ぎである。この他、牛、羊、豚、ニワトリなど大家族である。

 住んでいる家は「木と土、石」を使った簡素で自然のぬくもりのある大きな家である。リビングと言うか居間・応接間と言うか、最初に案内された部屋の真ん中には、自家製の木炭に火を入れて赤々と部屋を暖めてくれていた。周りに小ぶりなイスが10個位。炭で暖をとりながら、自家製の茶葉と山の水を沸かした熱湯で本当に美味しいお茶を入れてくれた。何杯もお茶を頂いた。天然茶葉、手もみの自家製で勿論無農薬の高原茶(海抜800m)である。聞けばこの部落や一族では90歳、100歳の人が多く、健康で殆どガンにもならないそうで、健康茶として有名であるとの事。翌朝になって茶畑を見せて頂いたら、茶畑のように整っていない、まさしく天然そのものの茶の木が元気に生えていた。

 そして夕食。お母さんが作ってくれた自然素材だけの野菜料理。私が特別客と言う事で飼っているニワトリ一羽を鍋料理にしてくれた。手作りの豆腐、燻製の豚肉…テーブルの上は心のこもった手料理でいっぱいである。普段は辛い料理だが、私の為に辛い料理でなく普通の味にしてくれていた。少しのお酒(ビール)を飲みながら、美味しい料理と山の生活の話を聞かせて頂いた。夜22時頃になって犬がワンワン騒ぐので何かと思ったら、隣の山に住む親戚の人々が外国人を見たいと言って集まってきていた。懐中電灯をつけ、山を越え、川を渡り、道なき道を歩いてやって来ていた。雑談をし、23時半頃帰っていった。見送る時、夜空を見上げると満天の星である。夜空の中に薄く山が見え、その頂上に明かりが点々と見える。山の頂に人が住んでいるのであろう。

 困った事が2つ。1つは水道がないので手を洗ったり歯を磨く事が出来ない事。勿論風呂、シャワーなどない。もう一つはトイレである。母屋続きに穴を掘り、丸太を2つ並べてその中に用をたす。お茶を飲みすぎて明け方トイレに行きたくなったが、真っ暗でどうして良いか分からず大苦労した。トイレの周りは板と屋根もあるのだが…。

 朝食後、山や畑を案内して頂き、別れを告げ帰路についた。これ程の山奥に入ったのは勿論初めてであり、自然の中で生活するのも初めてだが、文明社会に慣れた私には何かすごく新鮮な体験であった。頭の中がスッキリし、頭の休養にもなった。新しい発見や新しいビジネスが生まれそうである。お世話になった皆さんに改めて御礼申し上げたい。