2010-12-08

M-net 2010-12-08

知恵を売る

先日、あるものを購入するために、販売店の担当者と話をした。
なるべく出費を抑えるために、もう少し値段を下げてほしい…と話した。そういう客は多いらしく、販売店側も大変苦労しているという。
そこで私は「ではあなたの問題を解決するための知恵を出すから、その代わりに値段を下げてほしい」と、違った角度から話をし、その場で資料を渡し、納得していただいた。その日の夜に、販売店の支店長が値引きした見積りを持って再びやってきた。
これを企業に置き換えてみると、今の厳しいデフレを乗り切るにはコストダウンが欠かせない。
だが、ただ下請け業者に値下げを要求するだけのコストダウンは、相手が身を削るだけでいずれ限界がくる。何とか生き残れたとしても“勝ち”残ることは難しい。
これからの時代を勝ち残るには、お金やモノといった金額で価値を表せるものだけで考えるのではなく、“知恵”や“情報”、“ノウハウ”といった目に見えないものに価値を見出し、それを活かして利益を創出することが求められる。

ゴミ回収業者を味方に

中国で進行している工場改革プロジェクトの話をひとつ。
ある日系企業より、中国の子会社がうまくいっていないという相談を受け現地の調査に入ることになった。
ところが、この現地の責任者を務める中国人総経理が私たちを警戒し、工場に一歩も入れず誰とも口を聞けない事態になってしまった。
この状態で、工場の問題点を見つけるためにプロジェクトメンバーが目をつけた点がすごい。
1.【工場から出るゴミ】…ゴミ回収業者を味方にし、ゴミを調べることでどんな材料をどれだけ使っているか把握。
2.【類似工場】…この工場と似たような業種の工場の実態調査を行い、問題の工場の運営状況を推測。その数40件、すべて無料である。
3.【以前勤めていた人】…実態を正しく掴むにはやはり生の情報が必要である。そこで“退職者”に着目し、話を聞きだしたという。ただ、社員リストといった記録がなく、探し出すために100件もの聞き込みをしたというからおどろきである。
最後にこれらの情報を組み合わせ、工場の問題点を提示し、総経理を納得させることに成功したという。
本来見るべきものが見れないという絶体絶命のピンチを“柔らかい発想”と“地道な行動”で乗り越えたプロジェクトチームに大変感動した。
大きな壁にぶつかっても、あきらめることなく、情熱を持ってやりぬく事で、かならず道は拓ける。